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『業界の現状分析から業界の未来を生き抜く正しい戦略を描く』
~保険代理店・FP事務所 実践経営レポート~
船井総研 保険チーム
これまで4回にわたって、保険代理店の体制整備に関する事項をお伝えしてきましたが、今回が最後となります。
前回に引き続き、【Check】項目で実施すべき事項とそれに追随する形での【Act】フェーズにおける事項をお伝えします。
【Check】段階においては、経営者自らもしくは教育管理責任者が主導し、
従業員の指導と管理を行っていくことの必要性をお伝えしてきましたが、
今回はとりわけ募集行為時における管理・指導について記載したいと思います。
この段階では、募集人の禁止行為についての項目が中心となってきますが、以下に列挙していきます。
〔保険会社または保険募集人(保険代理店)が、保険契約の締結、保険募集または、
加入推奨の場面において、保険契約者または被保険者に対して、
保険契約の契約条項のうち保険契約者または被保険者に影響を及ぼすこととなる
重要な事項を説明しなければならないというもの〕
ですが、これは下記の図の、
「保険契約者や被保険者によって重要な事項」とあるように、非常に抽象的になっています。
これまでのように契約概要や注意喚起情報のみを伝えればよいのではなく、
これは、「顧客が必要としている情報」をすべて説明することであり、
顧客にとって不利益となる情報もこの部類に入るといえましょう。
〔保険契約者の無知に乗じて、例えば保険契約者にとって不利な事項を
言葉巧みにあたかも有利であるかの如く、説明するなどして保険契約を締結させようとする行為〕
保険契約者や非保険者に事実と異なることを告げたり、
保険契約者または被保険者の判断に影響を及ぼすこととなる
重要な事項の説明をせずに保険契約を勧める行為(チラシなどの配布も含む)
これに対する防止策としては、
・社内規程の策定により、営業員の募集行為を管理・改善するためのプロセスを構築する
・保険契約締結時には、契約者に重要事項説明書(契約概要、注意喚起情報)、意向確認書を交付し、
「パンフレット」や「契約のしおり」の書面を利用して、保障内容や免責事項等、
契約内容に関する重要事項を必ず説明する
などロープレ等を用いて徹底することが求められます。
(1)虚偽告知教唆の禁止
保険契約者または被保険者が保険会社当に対して、虚偽のことを告げることを勧める行為
・傷害保険の募集につき、事実に反する職業・職種を告知するように勧める行為
・血糖値が高い被保険者に対して、正常値を告知するように勧める行為
・他の保険契約があるにも関わらず、「無い」と記入するように勧める行為
・傷害保険契約の締結に際して、職業や職種を偽るように勧める行為
・自動車保険契約に際して、過去の事故歴を偽るように勧める行為
(2)告知妨害・不告知教唆
保険契約者や被保険者に対して、告知をしないように説明する、また保険募集人が告知について偽る行為
・保険金請求歴があるにも関わらず、その履歴を告知しないように勧める行為
・顧客から既往症があるにも関わらず、加入に影響すると考え募集人がその事実を
「既往症はない」と偽って顧客に告知所への記入をさせない行為
・所得補償保険の契約にあたり、既往症を申込書に記載させない行為
・保険契約者等に確認せずに勝手に告知事項欄に記入する行為〕
といったことが挙げられます。
防止策としては、
・社内規程の策定により、営業員の募集行為を管理・改善するためのプロセスを構築する
・保険契約締結にあたり、保険契約者に告知の重要性について説明するとともに、告知書を正しく用いる方法を徹底する
〔保険契約者または被保険契約者に対して、不利益となる事実
※を告げずに、既に成立している保険契約を消滅させて新たな保険契約の申し込みをさせ、
すでに成立している保険契約を消滅させて既に成立させている保険契約を消滅させる行為〕
※(1)一定金額の金銭をいわゆる解約控除等として、保険契約者が負担することとなる場合があること
(2)特別配当請求権その他の一定期間の契約継続を条件に発生する配当に関する永久兼を失う場合があること
(3)被保険者の健康状態の悪化等のため、新たな保険契約を締結できなくなる場合があること
対策としては、
・保険募集人は、顧客が不利益な事実を理解したことを確認するために、
注意喚起情報に「不利益な事実」を記載し、顧客から確認印を取り付ける。
⇒金融庁監督指針Ⅱ-4-2-2(2)⑩㋓)
・不利益となる事実を説明した旨、またその内容について証跡を残す。
といったことがあります。
〔保険契約者または被保険者に対し、保険契約の締結または保険募集に関して、
保険料の割引、保険料の割引、割戻しその他特別利益を提供したり、その利益提供を約束すること〕
このことについては、募集人が「うっかり」口走ってしまうこともありますので、
どのような内容が該当するのかを研修等を通じて認識させておくことが有効といえます。
特別利益の提供とみなされる例としては、
・「第一回保険料は無料です。」と保険契約者に約束する行為
・保険加入希望者の第一回保険料を肩代わりして保険契約を成立させる行為
・加入希望者に対して、「保険に加入したら商品券1万円をプレゼントする。」と告げて募集する行為
・保険料の割引・割戻しを約束する行為
・保険料の計算にあたり、端数処理(切り捨て)を行う
・手形等により保険料を領収した
・不当なノンフリート等級を適用して保険料を割引した
・保険募集人が契約者の親族に対して、保険料を名目に現金を貸し付けた
・自動車整備工場を兼営している代理店が、自動車保険契約の締結を条件に整備代金を値引きすることを約束した
といったことです。
こうした事項は、ロープレ等では発覚することが難しく、
募集人が突発的に発してしまうことがあり得ますので、知識として習得させておくことが不可欠です。
〔保険契約者もしくは、被保険者または不特定多数の者に対して、1の保険契約の契約内容につき、
他の保険契約の内容と比較した事項であって誤解させるおそれのあるものを告げ、または表示する行為〕
具体的には、
・客観的事実に基づかない事項または数値を表示すること
・保険契約の内容について、正確な判断を行うに必要な事項を包括的に示さず一部のみを表示すること
・保険契約の契約内容について、長所のみをことさらに強調したり、
長所を示す際にそれと不離一体の関係にあるものとをあわせて示さないことにより、
あたかも全体が優良であるかのように表示すること
・社会通念上または取引通念上同党の保険種類として認識されない保険契約間の比較について、
あたかも同等の保険種類との比較であるかのように表示すること
・現に提供されていない保険契約の契約内容と比較して表示すること
・他の保険契約の契約内容に関して、具体的な情報を提供する目的ではなく、
当該保険契約を誹謗・中傷する目的で、その短所を不当に協調して表示すること
・「業界イチ」「一番売れている」など客観的事実に基づかないことを表示する
・条件が違う内容にもかかわらず、保険料の安さを強調して説明する
こうした事項については、募集人経験が浅い人に関わらず、ベテランほどうっかり使ってしまうことがあります。
これまでの営業では、グレーゾーンであったために、その経験から慣れて用いてしまうことなども散見されますので、
研修やロープレで徹底的に慣れることが必要です。
〔保険契約者もしくは被保険者または不特定のものに対して、
将来における契約者配当又は社員に対する剰余金の分配その他将来における金額が不確実な事項について、
断定的判断を示し、または確実であると誤解させるおそれのあることを告げ、もしくは表示する行為〕
例えば、
(1)実際の配当額が、表示された予想配当額から変動し、
ゼロとなる年度もありうる旨を予想配当と併記して表示しないこと
(2)表示された予想配当額が、受領額の目安として計算されたものである旨を表示していないこと
(3)配当の仕組み、支払方法その他予想配当の前提または条件となる事項について表示しないこと
(4)損害保険契約にかかる予想配当について、その前提または複数の予想配当額を表示しないこと
(5)合理的かつ客観的な推測の範囲を明らかに超える高額の予想配当額を表示すること
(6)特別配当を表示する場合に、普通配当と区別しないで表示すること
とくに、変額保険に関しては、投資性商品ということもあり、金融商品取引法に関連している事案になります。
変額保険を取扱ううえでは、運用部分の仕組みについて募集人自らが知る必要があります。
研修においては、これまでの保険商品の仕組みを理解する目的とは別に、
こうした投資性商品についての理解を深めるための時間をとる必要があるでしょう。
上記に列挙した禁止行為は、一部抜粋していますが、留意しなければならない禁止行為はそのほかにも
(1)過当競争の弊害を招きかねない行為
例:特定の金融機関への過度の預金協力による見込み客の獲得や保険料ローンを不正に利用した募集
(2)架空契約や保険金詐取を目的とする行為
例:保険金詐取を目的に、保険契約者に虚偽の保険金請求をするよう勧める行為
(3)保険本来の趣旨を逸脱する勧誘行為
例:法人の財テクを目的として保険契約勧める行為
短期の中途解約を前提として保険契約を勧める行為
(4)差別的な行為
例:保険募集の募集地域を合理的な理由なく制限する行為
(5)保険料立替、保険料の流用・費消など
例:顧客に対して保険料の立替を条件に保険を募集する行為
徴収した保険料を別の保険契約者の保険契約の保険料に充当する行為
といったものがあります。
募集人教育において、保険業法第300条に関するいわゆる「禁止行為」項目については
特に募集行為に直結する項目であり、かつもっとも目が届きにくい事項でもあります。
教育管理責任者については、定期的な勉強会や抜き打ちチェック、商品勉強会などを通して、
募集人が適切な募集行為を行っているかを管理・指導しなければなりません。
ここまで、記してきたように保険代理店の体制整備におけるPDCAは、
自らのすべての業務を客観視し、分析し、改善点を洗い出すことです。
そうなると、最終段階の【Act】については自ずとなにをしなければならないのかということが想起されてきます。
つまり、PlanからCheckまでのサイクルを徹底的に進めることで、
次の行動指針が生まれるわけで、これがPDCAサイクルとなるわけです。
これまで、保険代理店の体制整備について記載してきましたが、なにより大事なのは、
各募集人の行動を可視化し、経営者や管理責任者が積極的に関与、管理することがすべてともいえるでしょう。
保険代理店の営業担当者には、自社の周りの営業員がどのような営業をしているのか全く知らない、
といった方が多くいらっしゃいます。
これでは、保険代理店の体制以前の問題となっていますので、
経営者やそれに準じる役職の方々は、改めて自社の体制構築のための計画を立ててみてはいかがでしょうか。
これまで、4回にわたり保険代理店の体制整備について述べさせていただきましたが、
何よりもみなさま保険代理店のますますの発展を願うばかりです。
今後の進展を期待したいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
以上
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