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『業界の現状分析から業界の未来を生き抜く正しい戦略を描く』
~保険代理店・FP事務所 実践経営レポート~
船井総研 保険チーム 岩邊 久幸
今週は、中国平安保険についてです。
中国平安保険は、創業30年間で持続的なモデルチェンジを繰り返し、
普通の保険会社から、総合金融グループへ、そしてフィンテックグループへと進化してきました。
そして、その進化は止まっておりません。
1988年に創業し、1997年までの最初の10年で、モダンな保険商品の開発と、
社内の体系・制度構築に努めてきました。
そして、1998年から2007年の次の10年で、保険経営にフォーカスを当て、
収益を稼ぎに行くと同時に、次のステップである総合金融の模索をスタートします。
そして、2008年から2017年は総合金融の強化を図ると同時に、金融+テクノロジーの模索を開始します。
そして、2018年~の10年間で、金融+テクノロジーの深堀を、
そして次のステップである金融+エコシステムの模索を始めています。
現在社員数は、180万人です。
うち、100万人は所謂営業マンです。
顧客数は1.6億人で、中国国民の9人に1人は中国平安のお客様となっています。
年商約1兆元であり、毎日30億元の数字を上げています。
年間成長率は、130%とこれだけの規模になっても、成長率を維持しています。
年商の60%は保険収益です。
年間1400億元の賠償額であり、毎日3万件の保険処理件数とのことです。
2019年にフォーチュン500において、29位となり、全世界金融機関時価総額では6位、
全世界保険グループ時価総額では1位と、もはや世界一の保険会社といっても過言ではありません。
そんな中国平安保険の強みは「テクノロジー」です。
顔認識・音声認識成果率99%以上を誇る、人工知能(AI)、
毎秒10万件の処理スピードを誇るブロックチェーン、金融に特化したクラウドコンピューティング、
中国で唯一全ての金融事業ライセンスを有することで得られたビッグデータ、
行政からも信頼されるほどの安全性を誇る情報セキュリティです。
彼らは、これらのテクノロジーを強みに、「金融エコシステム+プラットフォーム」へと展開していっています。
例えば、「金融+自動車」、「金融+都市」、「金融+不動産」、「金融+医療」といった領域です。
平安グッドドクターという、オンライン診療アプリケーションはその代表格の一つでしょう。
そのアプリケーションからオンライン診療を受けることができるだけでなく、
処方箋も発行され、アプリケーション上で薬を購入することができます。
こういったサービスへの投資を本格的にしていきます。
結果的に、未上場で時価総額1兆円以上の企業をユニコーン企業と呼びますが、
既に中国平安が投資したユニコーンは10社以上に上るとのことです。
ちなみに、日本におけるユニコーンはメルカリの1社だけといわれています。
彼らは自身の強みであるテクノロジーを用いながら、マネタイズしやすいかどうか、
多くのお客様がいるかどうか、十分な市場規模があるかどうか、参入障壁が作れるかどうか、
スピーディに展開できるかどうかの5つを投資の条件として見極め、投資をしていっているわけです。
改めて、大きな方向感を10年単位で決め、そして先ほど挙げた5つの条件に合わせて投資をしていき、
自社・グループを拡張していくというのが、中国平安の成長ノウハウです。
さて、彼らの金融プラットフォームの一つに、「ONECONNECT」という金融機関向けサービスがあります。
このプラットフォームは、金融と政府と消費者をつなぐものです。
具体的には、5億人の個人と、7500万社の企業、
そして1万社の金融機関がこのプラットフォームを通じてつながっています。
このプラットフォームから、小売り金融、企業金融、投資、保険、海外送金が可能となっています。
例えば、企業融資に関して。
日本同様、中国においても、中小企業が金融機関から融資を受けるのは難しい状況です。
日本においても、融資の申請から着金まで、早くて1か月、遅いと3か月ほどかかるものです。
しかし、このプラットフォームを通して、融資を申請すると、
融資可否判断が10分以内で行われ、着金が最短30分で可能とのことです。
個人や企業にとって、キャッシュフローというのは、血液と一緒ですから、着金が速ければ早いほど重宝されるのは当然です。
これが実現できたのも、大量のビッグデータとAI、そしてブロックチェーン技術があるからこそなのです。
そして、自動車保険においてもこれらの技術が応用されています。
平安保険の自動車保険に加入していると、保険金を申請してから、着金されるまで、最短5分とのことです。
5分ですよ?!
先日、とある保険会社が2日で着金可能になった!とニュースになっていましたが、次元が違います。
これも、中国最大の自動車保険加入件数を誇り、そして6万件超の事故・傷画像を持っているので、
自動車の事故・傷写真を送れば、AIが瞬時に判断して、保険金の算出が可能とのことです。
また、個人ローンも全てオンラインです。オンラインローン審査プラットフォームを構築し、ここでもAIが活躍しています。
画像認識技術により、詐欺対策が可能になったとのこと。当然、顧客も便利で早いので、
ローン残高が10倍に、店舗数を800以上減らすことができ、ローン損失低下67%となったとのことです。
そして、驚異的なのはスマートカスタマーサポートです。
中国平安グループでは、1日96万通、年間3.5億通もの電話をさばいているそうです。
そのうち70%はロボットが対応しているとのことです。
結果、人的リソースが30%減らすことができたとのことです。
このロボット対応ですが、話し手である個人は、ロボットと話しているという感覚はないそうです。
なぜなら、このロボットは方言を理解し、相手の感情も理解しているとのことです。
例えば、債務者に対して返済の督促電話をかける際、相手が丁寧な態度をとってこれば、
優しい口調でかえし、横柄な態度をとってこれば、強い口調で返すとのことです。
本当に近未来のオペレーションを実施していると思いませんか?
それもこれも、全てデータベースに起因しています。
年商の60%が保険であり、社員の60%は営業マンです。
スタートは、普通の保険会社でした。
しかし彼らは、創業当初は保険商品の開発と、社内の組織・制度構築に力をいれます。
そして、日頃の営業活動(オフライン)を通じて入手した情報を、使えるデータにコツコツと変換し、
ため込んできて、今のようなフィンテック企業になりました。
ですから、保険代理店も今は10人満たない企業かもしれませんが、
30年後には中国平安のような企業になれる可能性があるといえます。
そのような無類の可能性を中国平安からは感じさせられます。
来週は、深圳視察を通じて、これから保険代理店は何をすべきかをお送りいたします。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました!
以上
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