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『業界の現状分析から業界の未来を生き抜く正しい戦略を描く』
~保険代理店・FP事務所 実践経営レポート~
船井総研 保険チーム
「保険の営業職は今後なくなるだろうか。」
このテーマは、保険業務に従事するすべての方が一度は考えたことがあるものだと思います。
とりわけRPA(Robotic Process Automation)というワードをよく聞くようになってから、
営業職は、AIの台頭などにより数十年後にはなくなるという記事を目にします。
今回は、AIなどの技術進歩が保険ビジネスにどのような影響を与えていくか考えていきたいと思います。
ここ数年でAIの台頭により将来的になくなる職業はなにか、といった話題が盛んになっていますが、
たとえば、都市銀行や地銀の銀行員が削減されているように、
とりわけ銀行業務はAIにとって代わるだろうと指摘されています。
同様に、保険代理店の業務においても、もっとも時間を割くバックオフィス業務をはじめ、
将来的にオートメーション化されていくだろう、といったこと、
また保険営業員の強みとしていた顧客のニーズをソリューションとして変換する強みも
AIにとって代わっていくということが考えられます。
保険クリニックを展開する株式会社アイリックコーポレーションは、
100%子会社である株式会社インフォディオを通して、
スマートフォンやタブレット等のカメラで生命保険募集人が撮影した生命保険証券を、
AIを搭載しディープラーニング技術を活用して生命保険証券を自動分析するサービスを今年開発しました。
このサービスの内容は、
⑴保障内容や金額等を、生命保険募集人がスマートフォンやタブレット等のカメラで撮影するだけで、
保険の内容をビジュアルで分かりやすくした「分析シート」を生成し、
⑵AIによる自動読み取りと独自の自動分析により、これまでのお客様の待ち時間を最大90%以上短縮し、
⑶現状の保障内容と新たに加入を検討している保険との過不足がないかをチェックし効果的な保険の見直しができる。
というものです。
株式会社アイリックコーポレーションの「生命保険証券の自動分析サービス」
保険の営業員がお客様の保険証券の分析をし、お客様の疑問にお答えできるようになるまでには、
過去に販売されてきた膨大な数の保険の内容を把握する必要があるため、知識・経験の差が生まれてきます。
そうした個人差を標準化して、すべてのお客様に均一のサービスを提供する、
ということがこのAIシステムの目的になります。
また、株式会社シナモンは、AIを活用した文字認識ソリューション「Flax Scanner」を展開しており、
保険会社の申込書などのシステム入力作業に活用されています。
保険の契約においては、代理店がPCで作成した申込書を顧客のサイン等を得て、
そのままPCにて登録すれば自動的に保険会社のオンラインに反映されるものもあります。
代理店でも、オンライン反映まで完結する保険種類が増えていますが、
それでもまだ保険会社の方で申込書を見ながらオンライン反映させなくてはならない保険種目もたくさんあります。
シナモン社の「Flax Scanner」では申込書に記載の情報を高い精度で読み取り、システムに自動で入力。
一方で不確定の確率が高い場合はエラーを表示し、マニュアル対応が可能とのことです。
これまだ多くの工数を費やしてきた文書入力という業務が自動化されれば、
人員が削減できればコストが下がって、場合によっては保険料も下がるかもしれません。
また、保険会社への問い合わせ電話についても、AIを活用して効率化することができるそうです。
音声認識技術によって業界の特殊用語も含め高い精度でテキスト化され、
それまでオペレーターが検索していたものをAIが代わりに文書検索することで、
オペレーターの対応スピードが向上する可能性があるということです。
こうしたことから保険業務のうち、営業業務までもがAIにとって代わられるとなると、
業界として保険業務従事者が削減されることはいうまでもありません。
それでは、営業員の強みをいうのはどこに見出していけばいいのか、
それはAIが弱みとする「非論理的な思考」を提供することにあるといえると思います。
AIは過去の膨大なビックデータから、判断根拠を示すというのが強みですので、
データに蓄積されていない事例、また人間の感情といったものをくみ取ることはAIが苦手とする分野です。
お客様の、顧客自身がはっきりとわからないニーズ、
ささいな表情や言葉尻から意図をくみとり、ソリューションとして実現する、
そういった営業員が属人的に持ち合わせている「なんとなく」な思考というのは、
AIにはできないこと、つまり弱点になります。
また、お客さまにも保険商品に加入する理由は、
すべてが論理的に解釈できるもの、であるとも限らず、
営業員とのつながりや、安心感、といったAIにはない人間的な要因があることも
重要な要素であるといえましょう。
こうした人々が持ち合わせている思考は、AIの出現によって衰退するものではありません。
むしろ明確に差別化していく必要があるともいえます。
よって今後は、お客様と対面営業では、論理性と非論理性をいかに両立させて提案できるか、
ということがより重要になってきるといえます。
改めて、保険業務というのは、人々がいるからこと初めて生まれる業務、
また仕組みであるということに営業員は立ち返り、
人としての強みをより誇示できる人物となるように心がけていきたいものです。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
以上
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