みなさま、船井総研の渋谷雄二です。
平成29年に、「顧客本位の業務運営に関する原則」、所謂フィデューシャリー・デューティーの原理・原則が、金融業務に従事する人間にとって、営業行為の統率を目的に流布してから、二年以上が経過しました。
当初、1年ほどは、金融庁による協力な介入が奏功したこともあり、これまでの金融機関(銀行、保険、証券など)の慣習的ともいえる営業行為にくぎを刺す役目として、国内全体として変革を感じさせる兆しがありました。
しかし、ここ半年ほどで、またそれ以前の営業体制に逆戻りしているともいえる事象が多く発生しているとように思えます。
投信の不適切乗り換え、保険商品の説明不足、同様商品への乗り換えなど、営業員主導による顧客にとって不本意な営業行為が跋扈しています。
実際、営業経験が長かった私からすれば、必ずしも営業員にすべての責任があるとは言い切れないと思います。
本質的には、「フィデューシャリー・デューティー」は「受託者責任」であるので、受託者である保険会社に責任があることになります。
ブラック・ボックス化している営業現場に介入できているか、そうした隅々までのマネジメントができないと、フィデューシャリー・デューティーは画餅です。
改めて、フィデューシャリー・デューティーの原理原則を意識し、現場もトップも今後の金融商品の販売のありかたを考えていかなければなりません。
<参考;フィデューシャリー・デューティー>
「顧客本位の業務運営に関する7つの原則」
【顧客本位の業務運営に関する方針の策定・公表等】
原則1.金融事業者は、顧客本位の業務運営を実現するための明確な方針を策定・公表するとともに、当該方針に係る取組状況を定期的に公表すべきである。当該方針は、より良い業務運営を実現するため、定期的に見直されるべきである。
【顧客の最善の利益の追求】
原則2.金融事業者は、高度の専門性と職業倫理を保持し、顧客に対して誠実・公正に業務を行い、顧客の最善の利益を図るべきである。金融事業者は、こうした業務運営が企業文化として定着するよう努めるべきである。
【利益相反の適切な管理】
原則3.金融事業者は、取引における顧客との利益相反の可能性について正確に把握し、利益相反の可能性がある場合には、当該利益相反を適切に管理すべきである。金融事業者は、そのための具体的な対応方針をあらかじめ策定すべきである。
【手数料等の明確化】
原則4.金融事業者は、名目を問わず、顧客が負担する手数料その他の費用の詳細を、当該手数料等がどのようなサービスの対価に関するものかを含め、顧客が理解できるよう情報提供すべきである。
【重要な情報の分かりやすい提供】
原則5.金融事業者は、顧客との情報の非対称性があることを踏まえ、上記原則4に示された事項のほか、金融商品・サービスの販売・推奨等に係る重要な情報を顧客が理解できるよう分かりやすく提供すべきである。
【顧客にふさわしいサービスの提供】
原則6.金融事業者は、顧客の資産状況、取引経験、知識及び取引目的・ニーズを把握し、当該顧客にふさわしい金融商品・サービスの組成、販売・推奨等を行うべきである。
【従業員に対する適切な動機づけの枠組み等】
原則7.金融事業者は、顧客の最善の利益を追求するための行動、顧客の公正な取扱い、利益相反の適切な管理等を促進するように設計された報酬・業績評価体系、従業員研修その他の適切な動機づけの枠組みや適切なガバナンス体制を整備すべきである。