皆様こんにちは。船井総研の渋谷です。
来る5月25日から令和初めての国賓としてトランプ大統領が来日しています。
宿泊先が、当船井総研が入るニッセイビルより2ブロック離れたパレスホテルということもあり、わが社員にとっては、今回の来日は対岸の火事ではありません。
今回は令和時代になり初めて海外首脳が新天皇と謁見するということもあり、非常に話題となっています。
東京都内では、警視庁による2万5000人体制の警備や、日本政府が滞在費や警備費などで2,500万負担するということもあり、物々しい雰囲気が各所で漂っていました。
ただ、米国内では、シークレットサービスによる、大統領身辺の警備に一日あたり100万ドル(約1億円)かかるとも言われているので、当たり前のことなのかもしれません。
さて、今回の来日での日米首脳会談では、中心は日米貿易摩擦に関する議論でした。
この日米貿易通商交渉に関して、今回は空振りに終わった、といった見解がでていますが、今後の国内経済にどれほどの影響をもたらすのか、ということを考えてみたいと思います。
今回の通商交渉では、米国側から本国への日本車・部品の輸出へ追加関税25%を課すというものと、米国産牛肉や豚肉などの関税を、TPPの水準まで引き下げて米国に適用し、米国の対日輸出増の要求に応じることが中心となっています。
農産物に関しては、米国がTPPから離脱したうえで、豪州産の牛肉輸入が増加したことを端とし、米国側として輸出を増やしたいという目的と、自動車については、米国内における米国車のプレゼンスを高め、国内での雇用を促したい、といった目的があるといわれています。しかしこの点に関して実際は、日本の自動車メーカーの米国への輸出台数は減少し、北米で生産する日本車の米国販売シェアが拡大しています。ですので、自動車における日本からの総量輸出規制といったリスクは影響は深刻なものとは言い難いと考えられます。
むしろ米国として懸念するべくは、米中貿易摩擦のほうでしょう。
根本的に、日本と中国では、対米国における貿易通商の根本が全く違うといえます。
米国としては、中国に対して、
(1)知的財産権保護の問題
(2)国営企業優遇による競争排除や低コスト生産を通じた輸出ダンピング
(3)補助金供与による企業の低コスト生産を通じたダンピング支援
といった問題を指摘しており、自国経済保護の観点で、中国に追加関税を課しています。
日本に関してはこうした観点はあてはまらず、米国は国家としての体制が対等ではない状況の上で、経済競争をフェアにしようとする要求に対抗しようとしているわけです。
米国としては、この不公正条件に対して、強硬策で追加関税を強行しているわけですが、この米中貿易摩擦は、より長期的なスパンでの交渉が不可避となります。
つまり、今回の米国側としては、米中貿易通商交渉を視野に入れつつ、日米貿易通商交渉において成果を一定で示すことで、足掛けとして次の本題に追求していくのではないかということが考えられます。
長期的にみれば、日米貿易通商交渉は、景況感を左右する大きな材料となるとは言い難く、むしろ米中間の貿易通商交渉がもたらす対外的な影響のほうが看過できない事象となるといえるでしょう。