船井総研の渋谷です。
ここ数週間、交通事故のニュースがとりわけ続出しています。
交通事故の件数は、国内においては総じて減少しているわけではありますが、とりわけ高齢者の誤操作による事故が多くピックアップされているように見受けられます。
国際交通事故データベース (IRTAD)という国連加盟国の主要32か国の交通事故統計があります。
https://www.itf-oecd.org/road-safety-annual-report-2018(英文)
これによると、日本において2017年は、2016年から交通事故による死傷者数は5.7%減少しているという傾向にあります。2000年から2017年においては、交通事故死傷者数は57%減少しています。これは、運転者総数の減少、自動車台数の減少、自動車のハイテク化などが要因としてあります。
ちなみに自動車登録台数は、1990年から約20%上昇している反面、交通量は、2000年から約6%減少しています。
また、OECD加盟国において、10万人あたりの死者数は3.5人で、これはトップである2.0人のノルウェーといった北欧諸国を筆頭に、54か国中10位に該当します。
ちなみに、ドイツは日本に次ぐ3.6人で、米国は11.6人となっています。
しかし、日本の交通事故発生内容に関して、交通死亡者数の37%は歩行者となっており(2017年)、歩行者の死亡者数については国連加盟国においては減少率の低さは全世界で際立っている状況です。また都市部の公道における交通事故死亡者数は、全世界でワーストとなっています。
さらに、歩行者死亡者数の半数は65歳以上のシニア層が占めており、交通事故死亡者の年齢別においては、20歳前半は2000年から約8割減少している傍ら、65歳~74歳は約47%減少と、交通事故死亡者のうち、高齢者の死亡率は増加していることとなります。
あおり運転などの影響で危険と思われている高速道路での交通事故発生は全体の2%ほどにしかすぎないのです。(米国は約10%)
つまり、日本の交通事故発生を分析すると、
①都市部の公道において、②歩行者、③特に高齢者の 死亡率は増加傾向にあるといえます。
あおり運転や、危険運転などが頻繁にニュースになるようになったことからドライブレコーダーの普及など、すべてのドライバーが明日は我が身という認識で交通事故へのリスク管理が自発的になってきているといえます。
一方で、交通事故発生のたびに、「ガードレールを設置すべき」「高齢者は運転するべきではない」「歩行者の危機管理能力が甘い」とあらゆる原因を他責傾向にする風潮が強まってきているのも事実です。
私も頻繁に運転する身として、明日は我が身と思って、常に最大限の緊張感をもって運転します。
運転におけるリスクは全て自己責任と思う反面、もらい事故はどうしようもないというジレンマに陥りますが、これは全てのドライバーに共通している認識でしょう。
「運動機能が低下した高齢者は総じて運転すべきではない。」といった暴論も跋扈していますが、地方の住民にとっては死活問題ですし、また「政府がインフラ整備を進めるべきだ。」といった主張は、現実的に難しいものがあります。
個人的には、約数十分の動画を観るだけで免許更新ができてしまう、運転免許制度にも改善の余地はあると思っていますが、こうした交通事故の問題はテクノロジーの進歩による手助け、また個々人のモラル、行政のインフラ計画など、様々な観点から考えていかなければなりません。
「取締まりのための取締まり」のような、従来的な方法で検挙を増やすことで交通事故を抑制する、ということでは根本的な問題の解決にはならないのです。
国際的に、あらゆる項目で模範的な交通事情となれるように、私も考えて行動していきたいと思います。