厚生労働省は、15日に中央社会保険医療協議会において、CAR-T療法(がん治療における免疫療法の一つ)において主要な治療薬とされてきたノバルティスファーマ(スイス)の「キムリア」を保険適用すると発表しました。
これは、一回の投薬治療の金額、公定価格が3,349万円かかるとされており、小野薬品工業の「オプジーボ」に続き、超高額薬剤が保険適用された例となります。
このニュースを鑑みて懸念されるのが、患者の負担は軽減する一方で、国家の医療費支出増大による財政逼迫につながるのではないか、ということです。
しかし、実際のところキムリアが保険適用されるケースは、白血病等の抗がん剤治療により効果が認められなかった216人とされているとのことです。この市場規模は72億円と算出されており、年間の医療費支出の40兆円と比較して0.018%に過ぎません。
キムリアが保険適用される前には市場規模は200億円に達すると見込まれていたので、インパクトとしては矮小化された形となります。
超高額薬剤においては、日米の製薬メーカーがこぞって開発を進めていると同時に、厚生労働省も保険適用の認可のスピードを速めています。
日経新聞によると、2017年度に1カ月の医療費が1千万円以上かかった件数は532件であり、また高額療養費の支給総額は2016年度で2兆5579億円となっているとのことです。
高額療養費の支出増により、財政負担につながるのではないかとの懸念もありますが、一方で、町医者で至急される鎮痛剤や湿布などにも保険適用されている現状を見直すのではないかと、という動きもあります。
2016年度に、C型肝炎治療薬「ハーボニー」の躍進により、年間販売額が極めて大きくなった医薬品の薬価を大幅に引き下げる「特例拡大再算定」を導入され、昨年大いに話題になった免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」も特例拡大再算定によって大幅に薬価が引き下げられました。
2018年度には、2年に1回の通常の薬価改定とは別に、適応拡大で売り上げが伸びた薬の薬価を年4回の新薬の薬価収載のタイミングに合わせて引き下げるルールも導入されたりと、制度も急速に整備されている現状は看過できないでしょう。
2月に製薬大手のロシュ(スイス)に買収された米国スパーク・セラピューティクスの眼科治療薬「ラクスターナ」は1回の投薬費用に85万ドル(9,500万円)の費用がかかるとされていますが、こうした開発競争の一方で、日本の認可制度においても迅速な判断が今後も求められることとなるでしょう。